(柳原 三佳・ノンフィクション作家)
2019年、大阪で小学5年生の女児が歩道に乗り上げたホイールローダーにひかれて死亡するという痛ましい交通事故が起こりました。
発生から3年、この事故の民事裁判をめぐって今、大きな議論が巻き起こり、全国的な署名活動が展開されています。
被告側の理不尽な主張に、公正な判決を求める署名が続々と
長女の安優香さん(当時11)を亡くした父親の井出努さん(48)は語ります。
「被告側は、娘が聴覚障害者だったことを理由に、逸失利益(生涯の収入見込み額)を、聞こえる女性労働者の40%まで減額すべきだと主張してきました。『聴覚障害者には、9歳の壁、9歳の峠、という問題があり、聴覚障害児童の高校卒業時点での思考力や言語力・学力は、小学校中学年の水準に留まる』というのがその理由です」
被告側の主張の問題を重く見た「公益社団法人・大阪聴力障害者協会」は、5月27日、『大阪府立生野聴覚支援学校生徒事故の公正な判決を求める要請署名運動』を急遽開始し、わずか数日で当初の目標だった1万人を大幅に上回る署名が集まっています。
<大阪府立生野聴覚支援学校生徒事故の公正な判決を求める要請署名運動へのご協力のお願い | 公益社団法人 大阪聴力障害者協会 (daicyokyo.jp)>
「大変多くの方にご支援いただき、大変感謝しています。こうした差別的な主張は、障害を持つ全ての人に対する侮辱です。私の娘だけではなく、障害者の将来を否定することにつながり、絶対に許すことはできません。引き続き声を上げていきたいと思います」(井出さん)